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ストリングスアレンジは、パート編成が鍵になる! ストリングスを構成する弦楽器たち

 ポップスやロックのアレンジでは、ストリングスは歌メロに対するカウンターメロディか、ハーモニーを担うパートとして使用されている。アップテンポの 楽曲の場合には、歌メロに対して大きくゆったりとカウンターメロディを奏でることが多く、スローテンポの場合、特にバラードなどでは、歌メロに対する カウンターメロディを弾きつつ、ベースやコードも演奏するというのが定番のアレンジだ。
 一般的に、ストリングスは4種類の弦楽器で構成され、音域の高いものから順にバイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスが用いられる。ただし、ポップ スやロックにアレンジとしてストリングスを加える場合、すでにトラックにベースが入っていることが多いため、同じ役割を果たすコントラバスは実際には 使用される機会が少ない。こうした理由から、ストリングスアレンジは、「バイオリン、ビオラ、チェロ」の3種類を使って行なうと考えればいいだろう。
 各楽器の役割は、それぞれの音域に合わせて決められている。最も高い音域まで演奏可能なバイオリンは、主にストリングス全体のトップノートを担 当し、中音域をカバーするビオラはトップノートに対するハーモニーを担う。そして、中低音域で豊かに響くチェロは、ビオラとの組み合わせでコードを作 り出したり、ベースなどと共に低域を担う。各楽器の音域を把握しておけば、打ち込みのストリングスをより本物らしく聴かせるのに役立つはずだ。
 バイオリンをはじめとするこれらの弦楽器は、弓で擦って音を出す仕組みになっていることから、音色的にはやや立ち上がりの遅い持続音になるのが 特徴だ。そのため、極端に速過ぎるフレーズや短い音がたくさん盛り込まれたフレーズでは、こうした音色の特性を活かせないことがあるので、フレー ズ作りの際には注意しよう。
 また、音の厚みや質感は、楽器の種類や数をどうチョイスするかで決まる。例えば、人数感を多くするとゴージャスさや広がりが増し、少なくするとメロ ディラインやアタック感が際立ってくる。どの程度増やすか、あるいは減らすかは、曲調や求める雰囲気に合わせて決定するといいだろう。

バイオリン(略称:Vn、Vln)は、ストリングスパートの中でも、最も華やかな音色を持つ弦楽器だ。
音域も、真ん中のド(図中の赤い鍵盤)のすぐ下のソから、4オクターブ上のソ付近までと非常に
広いので、アレンジでは第1バイオリンと第2バイオリンに分かれて、2つの役割を担うことが多い。
第1バイオリンの主な役割はコードのトップノートやカウンターメロディなどで、第2バイオリンは
第1バイオリンとのユニゾンや、コードの第2声を担うのがスタンダードだ。

ビオラ(略称:Va、Vla)は、見た目はバイオリンとよく似ているが、バイオリンより
もやや大きく、厚みのある弦楽器だ。演奏可能な音域は真ん中のドのオクターブ
下のドから、3オクターブ上のド付近までとなる。ストリングスアレンジでの役割と
しては、主にメロディラインを補強するハーモニーパートを担い、カウンターメロ
ディや、コードパートを担当することもある。編成によっては、バイオリンと同じ音
域を演奏し、ハーモニーを豊かに響かせるなど、役割は多岐に渡る。

ストリングスの3つの弦楽器の中でも、特に大きなボディを持つチェロ(略称:Vc)は、豊かで太い
響きと大きな音量を特徴としており、ポップスでは主に低域パートを担当する。音域としては、ビオラの音域をそのまま1オクターブ下にシフトしたと考えればいいだろう。歌もののストリングスアレンジでは、ベースラインを担当したり、単独でカウンターメロディを受け持つことが多いが、ビオラと共にハーモニーを構成することもある。

ポップスやロックのアレンジで使われる代表的な編成

ストリングスアレンジの最も小規模な編成は、弦楽器1本だけによる「独奏」だ。独奏には、主にバイオリンかチェロが使用され、歌メロに対するカウンターライン、もしくはハモリを演奏することが多い。また、たんにバッキングパートとしてだけでなく、間奏でソロをとることもあり、ハーモニー的なアプローチというよりはフレーズ的なアレンジがメインといえる。

歌ものでは、ドラム、ベース、ギター、ピアノに、弦楽器を1本加えた編成がよく使われる。バイオリンかチェロを選ぶのが基本で、ビオラが使われることは少ない

各パートを複数の楽器で演奏する編成を「合奏」と呼び、大規模なストリングスアレンジで用いられる。この編成では各楽器の並び順も大切で、左から第1バイオリン、第2バイオリン、ビオラ、チェロの順が基本だが、歌ものでは第1バイオリンを左、第2バイオリンを右、チェロとビオラを中央に配置して、歌メロとカウンターメロディの絡みを明確に聴かせることもある。

シンフォニックな印象のある「合奏」の編成パターンで最も多用されるのが、「8644」型(第1バイオリン×8、第2バイオリン×6、ビオラ×4、チェロ×4の編成)だ。これ以外にも「6422」、「4222」、「4221」型などがよく使用されている

「重奏」は、各パートが楽器1本ずつで構成されるシンプルな編成で、各パートの組み合わせ方次第でハーモニーを作れるのが特徴だ。具体的には、歌メロに対するカウンターメロディにハーモニーを付けたり、異なるカウンターメロディを複数絡ませることができるなど、フレーズ的なアプローチとコード感のあるアレンジを、同時に行なえるのが最大の利点といえるだろう。

第1バイオリン、第2バイオリン、ビオラ、チェロをそれぞれ1本ずつ使用した編成は「1111」と呼ばれ、いわゆる四重奏(カルテット)として知られている。この編成は、ヒップホップのストリングスアレンジなどでも頻繁に使用される

こちらは「1111」の応用パターンで、各楽器を2本ずつに増やした、いわゆる「2222」(ダブルカルテット)と呼ばれる編成だ。「1111」では迫力が足りない場合あるいはよりクラシカルな雰囲気を強調したい場合にこの編成を使う

同じフレーズでも、1人で弾くのと2人で弾くのとでは、音色の印象が異なってくる。これが「人数感」の違いだ。ストリングスでは、この人数感が音色を決める重要な要素で、同じパートを何本も重ねると、単体で弾いた時よりも豊かな厚みと広がりを得ることができる。ただし、厚みや広がりが増す と、メロディの輪郭やビブラートのニュアンスは逆に表現しにくくなってしまうことがあるので、フレーズの特徴や楽曲の雰囲気などを考慮したうえで、どの程度の規模の人数感が必要かを決めよう。