ジェネレックブランドを創設し、自身の 理学博士としての高い技術力で、同ブ ランドの開発を牽引してきた、会長の イルポ・マルティカイネン氏
イルポ:最初は趣味でハイファイスピーカーを作っていたのと同時に、アンプもやはり個人的な趣味で作っていました。真空管アンプの時代からそのようなオーディオ製品を開発する背景は持っていたんです。もちろんトランジスタのアンプにも興味はありました。「なぜスピーカーを作ったか?」というご質問ですが、フィンランド国営放送から、「モニタースピーカーは作れるか?」という要望があったことがきっかけですね。それから私は、「モニタースピーカーというのはハイファイスピーカーとどのような相違点があるのか」、また「モニタースピーカーとはどういうものなのか」という疑問を抱き、研究を始めたんです。
──ハイファイスピーカーとモニタースピーカーの違いはどういったことでしたか?
イルポ:モニタースピーカーは、ハイファイスピーカーと違い、「何も加えず、何も引かず」が基本です。研究の結果、この「何も加えず、何も引かず」と、音のキャラクター、再生の機能、試聴環境に適応できるような適応力、信頼性、保守部品の供給、製品としての一貫性などが、プロ用のモニタースピーカーとして重要であることがわかりました。1976年にフィンランド国営放送局から依頼を受けてから、2年間を製品の開発に費やしました。
──現在の人気モデルで小型モニターの8020、8030、8040は、世界中のスタジオやホームスタジオで使われていますが、もともとのコンセプトはどういったことだったのですか?
イルポ:コンセプトは簡単ですよ(笑)。各モデルのサイズに適したカテゴリーがあって、ベストソリューションとして、どんなサイズでどんな価格で提供するかを考えているだけです。70年代の創設以来、「アクティブタイプ」という基本コンセプトも変わっていません。そのため、まず第一に「アンプを内蔵する」。そして、「できるだけ与えられたサイズでコンスタントな指向性を実現する」。さらに、「この3つのモデルは、8000シリーズとして、プロダクションのファミリーになっている」ということです。つまり同じ外観で、同じメタルの構造でできているのです。
──大きさが異なるモデルで、同じ性能を維持することには苦労されたのではないですか?
イルポ:多くの研究を行ないましたし、多くのお金も使いましたし、多くの時間も費やしました(笑)。非常に大きな投資でした。
──サイズの大小にかかわらず、同じように出力できることには、何か秘密があるのですか?
イルポ:特に秘密があるわけではないのですが、それが会社の創設当時からの哲学でもあります。それが放送局では必要なことなんです。なぜなら放送局には、色々なサイズの部屋がありますから、その部屋に応じた色々なサイズのモニタースピーカーが必要なのは当然のことなんです。例えばTVの中継車では、より小さい部屋にモニタースピーカーを設置することになりますし、放送局からは、このような様々な環境に応じた大きさのモニタースピーカーの要求があるわけです。しかも、どの環境でもそのサウンドは、「ニュートラル」でなければならないという制約がありますからね。これが、「何も加えず、何も引かず」といった基本です。その基本性能をすべてのモデルで共通にするために、金属の加工やバスレフの構造など、技術的にカバーしているのがジェネレックのスピーカーの特徴と言えるでしょう。
↑放送局や大型スタジオでの実績が高いジェネレックでは、近年デスクトップユーザー向けの小型モデルを数多く開発している。小型ながらラージモニター譲りの豊かな低域再生を実現しているのは、同社のコンセプト通りだ
↑ジェネレックのラージサイズのモニタースピーカーは、世界中の大型レコーディングスタジオで、スタンダードモデルとして導入されている。写真は、その一例でエイベックス本社内にあるエイベックススタジオに設置されている 1035B
↑「ジェネレックは、ラージサイズからスモールサイズまで、一貫した構造で作っている」というコンセプトを教えてくれたイルポ・マルティカイネン氏(写真右)と、国際セールスマネージャーのラルス・ウーロフ・ヤンフルード氏(写真左)
↑8020 Bは、そのコンパクトなサイズを超えた大きな音像で、ラージスピーカーに匹敵する自然な低音再生を実現している。大音量で再生してもスピーカーのヘッドルームに余裕が感じられ、いくらでも鳴ってくれ る印象だ。また、自然なレスポンスで、ハイファイ感が強過ぎないため、録音制作からリスニング用として使える
↑設置は推奨距離よりも近い距離で、スピーカーとリスニングポイントがほぼ正三角形になるようにすると不必要に音量を上げずにダイレクトサウンドが得られる。写真は机の上でパソコンの両サイドに8020を置き、ISO-PODで縦方向に角度を付けてモニターの軸を耳に向けた例

今回試聴した8020Bは、本体内部にパワーアンプを搭載した2ウェイ仕様のアクティブモニター8000シリーズ中でも、最も小型なモデルだ。背面には低音再生用のバスレフポートが空いており、特に宅録や録音スタジオなどのニアフィールド環境に向いたスピーカーとして開発されている。本体のエンクロージャーはアルミダイキャスト製で、下部に設置されるユニークなラバー素材の「ISO-POD」というインシュレーターは、エンクロージャーの共振を抑える効果があり、本体の角度調節が行なえるようになっている。背面には電源スイッチやラインコネクターの他に、再生音質の調整用にトーンコントロールのディップスイッチが用意され、室内に合わせたイコライジングが可能だ。
本体の設置法だが、スピーカーの軸はウーハー上部とツィーターの間あたりにあるので、その軸が耳に向くように位置と角度を調節するといい。また、耳との距離は、推奨は0・7m以上だが、ノートパソコンのサイドに設置して聴いてみると、やや距離を近くすることで、部屋の影響を受けにくくなった。例えば、響きの多い6畳くらいの部屋では、パソコンの画面を中心にスピーカーとリスニングポイントを正 三角形にし、一辺が0・4〜0・6m程度の距離がいい。
また、音量レベルも重要で、気持ちがいいからと言って音量を上げ過ぎると、部屋の響きの影響で音像がボケてしまうので注意が必要だ。なお、音響調整用のトーンコントロールは、すべてオフの状態で設置位置を決めるのがいいだろう。 さて、気になる8020Bの音質だが、まず驚いたのは、このサイズからは想像を超えた音像の大きいサウンドが飛び出してきたことだ。定位が目に見えるようで、奥行きと立体感もある。8020Bで聴いて気持ち良くない音はNGにできるほど、リファレンス(基準)レベルのモニターだと言える。
ボーカルの録音で試してみると、声のキャラクターがハッキリ確認できて、非常にわかりやすく、ミックスダウンでは、EQやコンプの調整による変化がハッキリと聴き取れた。
仮に悪条件の重なった部屋でも、音源をダイレクトにモニターでき、聴いていて楽しいモニターなので、自宅での制作用とリスニング用を兼ねたモニターを探している人にはオススメだ。また、小型で持ち運びが楽なので、録音設備の整っていないリハスタやスタジオ作業にも使える。プロのエンジニアがサブモニターとして使うのにも十分対応可能なモデルだ。
↑同社の小型モニターは、エンクロージャー内にゆるやかなカーブのパイプを作ることで、内部の空気の流れをスムーズにし、豊かでスピード感のある低音再生を実現している















